10年以上も前に亡くなった母親名義のままアパート3棟の賃貸経営を続けている大家さんを知っています。大家さんには兄弟もいて、奥さんもいて、子供もいます。
これを聞いて、かなり問題だということがわかりますでしょうか?
通常、親が亡くなれば、相続人たちで遺産の分け方を協議し、その結果に応じて不動産の名義変更(=相続登記)も行います。
しかし、この大家さんの場合、兄弟仲が悪かったり“大人の事情”もあったりして協議すらされていません。
現在、大家さんが家賃を独り占め状態。このままの状態が続き、もし本人か兄弟が亡くなれば、さらに相続人が増えて複雑化します。トラブる可能性はかなり高いでしょう…。
相続登記って重要なんです。
相続登記はなぜ必要なのか?
土地建物を相続したら、所有権移転の登記手続きをし、名義変更するのが原則です。
これにより、その不動産の所有者であることを公に証明でき、かつ売却したり担保にしたりできるようになります。
上記の大家さんは賃貸を続けていますが、遺産分割の協議や相続登記が未了なので、厳密に言うと、そのアパートの所有者であることを証明する物が無いことになります。
借主は知らずに(この世にいない母親と)契約していると思われ、この点も大問題。「正当な貸主」じゃない人に家賃を支払い続けています。知りながら仲介を繰り返している業者もいるから驚きです。
もし大家さんが亡くなり、残された人たちが相続手続きをする場合、母親の相続まで過去に遡ってやり直すことになります。
そうです、そのツケは次世代に回り、大変な労力と費用を要することになるでしょう。
相続登記は義務化される
実は(この記事執筆時点で)相続登記は「義務」ではありません。任意です。
しかし、2024(令和6)年4月1日から義務化されることになりました。
所有者が特定できない空き家や土地が全国で増えたため、町づくりなどに支障が出てきたからです。
義務化されれば、相続の開始または所有権を取得したと認識した日から3年以内に登記しなければいけません。
正当な理由なく相続登記をしなかった場合、ペナルティとして10万円以下の過料になります。
上記の大家さんの場合、2027年3月31日までに相続登記しなければならないことになります。
不動産の登記には費用がかかります
もちろん、登記費用も見ておかなければいけません。
相続の場合、対象となる土地建物の固定資産税評価額の4/1000=0.4%の登録免許税がかかります。
また以下の書類なども必要です。
- 登記申請書
- 遺産分割協議書(誰が何を相続したか合意を記した文書)
- 相続人の印鑑証明書
- 固定資産税評価証明
- 亡くなった人や相続人の戸籍謄本
…など。これらを揃えて法務局に提出します。
実際には司法書士さんに手続きを依頼することが多いので、その分の報酬も必要です。
まとめ
私は今回の大家さんと直接の取引はないのですが、知ってしまった以上「相続登記を早急にした方がいいですよ」「手続きが面倒なら司法書士さん紹介しますよ」と伝えました。
それでも大家さんは「そのうちやろうと思ってるよ。すぐ罰則は無いだろうし」と軽い返答。一方、奥様にも同じ話をしたところ「何度も相続の話は出てるんですが、主人がやる気にならないんです。それでズルズルここまで来ました。何とかしてほしいんです…」と心配な表情で教えてくれました。
行動に移せない理由、感情的な“何か”が背景にあるような気がしました。大家さんを説得するにしても相当な時間がかかりそうです。あんまりお節介を焼くと怒られそうですし…。
とはいえ「自分が死んだら残ったもんが勝手に処理してくれる」なんて無責任なことを思ってほしくないので、たまに訪問して様子を伺っていこうと思っています。
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