いわゆる田舎の不動産の相続で、よくある悩みが「農地や山林の処分をどうする?」です。
同じ地で農業を引き継ぐなら別ですが、遠方に住む勤め人でしたら、まず“放置コース行き”決定でしょう。
じゃあ、空いた実家の売却とセットにして処分すればいい!
…というアイデアも浮かびますが、実際は難しいケースも多いです。
その困難な理由と対応策について、今回は取り上げます。
制限が厳しい「農地法」がある
農地(田畑)=国民の食料を安定供給するための資源という観点から、それを守り・利用することを目的とするのが農地法です。
市街化区域なら規制は緩いですが、それ以外の地域では、農地を売買・賃貸するには農業委員会の許可が必要になります。
許可を受けるにも、購入者(または借主)が営農計画を作成・提出し、一定規模の耕作を行っていくことが条件となります(通称:農業従事者)。誰でもOKではないのです。
中には手続きを踏まず当人同士で田畑を貸し借りしているケースもありますが、本来はNG行為。無許可で売買・賃貸した場合、その取引が無効になったり、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられることも。農地法違反の罰則って、結構キツいのです…。
営農計画がしっかりしていて農業にやる気のある借主・買主なら大丈夫です。
対応策①
実家の売却とは切り離し、農地については地元の農協や営農組合などに相談してはどうでしょう。
長野市の郊外では、農協が無償で借りて耕作している田畑がいっぱいあります。上手く話が進めば、耕作を委託することが可能です。草ボウボウで放置するよりはいいと思いますよ。
「相続した農地の地番や広さもわからないんです…」とお困りの方は、こちらのサイトが役立ちます。地図上で場所さえ特定できれば、基本情報は拾えます。
参考サイト:eMAFF農地ナビ
対応策②
空き家バンクに登録している建物であれば、一定の条件を満たすと、農地セットで売却できる特例があります。
- 空き家バンク登録物件であり、かつ、そこに隣接している農地であること
- 1アール(100㎡)以上~10アール(1,000㎡)未満の農地であること
- 買主は3年以上継続して空き家に住み、その農地で耕作すること
…といった諸条件があります。クリアできそうなら、この特例を利用しましょう。
今後、特例の条件がさらに緩和される予定です。詳しくは長野市の空き家バンク窓口などに確認してください。
(※追記)農地法の改正により、2023年4月から農地取引における最低面積(下限面積)の条件が廃止になったので、以前より取引しやすくなりました。
山林は不明な部分が多い
山林は農地法許可のような厳しい制限はありません。それでも売買・賃貸のハードルは高いです。
現在、私も長野市大岡と長野市若穂にある山林の売却依頼を受けていますが、買い手は見つかっていません。
以下のような事情があるからです。
- 相続しただけなので、所有者さん自身が場所も知らない
- 公図を取っても情報が古く、どこからどこまでかの範囲が不明確
- 大体の範囲を調べるだけでも数十万円~かかる
- 不法投棄が多く、その処分をどうするか問題がある
こうした話を聞くと、誰も買い取ってくれません。
一時期キャンプブームで「山を買う」ことが流行りましたね。しかし、その後「イメージと違って後悔している」「地元民とトラブルになった」などの発信もネット上で見られるようになりました。
山林は大きな財産になりそうに見えて、実は多くの人にとってリターンが少ないものです。
対応策
とはいえ、物件によって(買い手によって)は収益を上げる山林になる可能性もあります。
日照が良く、利回りが合えば太陽光発電の投資として活用…
あるいは、山中で採れる山菜やタケノコやハーブ類を、ルート開拓した飲食店に販売…
以前テレビで観ましたが、敷地に送電線や電柱が立っている山林を買い集めている人もいましたね。そうすることで電力会社から支払われる敷地料や補償料をゲット…
今一度、相続した山林に収益性を見い出せないか確認してみては?
ちなみに、山林売買の専門サイトもあるので、こちらに相談するのも手です。
参考サイト:山いちば
まとめ
耕作しない人、山に興味がない人にとって、相続した田畑・山林は“お荷物”でしょう。
しかし、いつまでも現実を直視せず放置するわけにもいきません。
アクションを起こすのは早ければ早いほど良いです。今までと視点を変え、利活用の方法を探ってみてください。
まずは法務局で公図を取るなど、物件の情報を整理しましょう。何から手を付けたらいいかわからないという方は、ご相談ください。
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