認知症の親の不動産売却はどうする?成年後見制度のメリット・デメリット

2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になると言われています。

認知症になると記憶力や判断能力に障害が出るため、銀行に知れると預金口座が凍結されたり、生活費が引き出せなくなるかもしれないことをご存知でしょうか?

同じく「親の家を売却して老人ホームの入居費に充てたい」と子が考えても、認知症の場合は不動産も“凍結”されます。

そんな状況のときに利用できるのが「成年後見制度(せいねんこうけんせいど)」になります。

簡単に言うと、代理人が財産管理や契約行為を行えるようにする制度です。

今回は、成年後見制度のメリット・デメリットなどについて解説します。

成年後見制度とはどんな仕組み?

成年後見制度の流れは、以下の通りです。

  • 家庭裁判所に制度の申し立てをする
  • 裁判所が本人の判断能力などを調査・鑑定する
  • 代理人となる成年後見人が選任される(子供が選ばれるとは限らない
  • 制度の利用開始(財産管理の経過を監督人がチェックすることもある)

申し立てから利用開始までの期間は3カ月〜4カ月くらい。利用開始になれば、後見人が口座から貯金を下ろしたり、必要な契約行為をすることができます。

後見人が勝手に貯金を使い込むといった不正を防ぐため、子供以外の人(親戚・司法書士・弁護士など)が後見人に選ばれることがあります。

別の記事で取り上げた「家族信託」との大きな違いは、認知症になる「前」か「後」かという点です。

成年後見制度のメリット・デメリットとは?

メリット

  • 認知症の本人が交わした不当な契約を取り消すことができる
  • 不動産売却などの契約を、後見人が代理で交わすことができる
  • 本人の生活に必要な食費や医療費などを預金口座から下ろせる

デメリット

  • 認知症の本人が亡くなるまで、後見人の責任は続く
  • 後見人に司法書士や弁護士が選ばれると、報酬を支払う必要がある(月2万円〜)
  • 本人以外の家族のために使う用途では貯金を下ろせない

まとめ

成年後見制度は、認知症の親の家を売却したい場合などに利用できます。

ただし、裁判所が判断を下して進めていくため、各種手続きには時間を要します。

私も成年後見人を介して住宅の売買をお手伝いしたことがありますが、売却価格の相談や売買契約書の提出など色々な手間がかかりました。

上記のように、必ずしも子供が後見人になれるわけではないので、成年後見制度の利用は最終的な手段と考え、事前に取れる対策を行うようにしましょう。

ちなみに、この制度には幾つか課題点が指摘されており、もっと利用しやすい仕組みにするため2026年までに改正される見込みです。

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