「こんな家、本当に売れるんでしょうか?」
「もう古いから……」
「かなり傷んでるんです」
「庭も荒れて、とても人に見せられる状態じゃありません」
長野市で空き家や古い住宅の相談を受けていると、こんな言葉を聞くことがあります。
所有者さんにとっては、何十年も見慣れた我が家です。
子どもの頃に走り回った家。
家族で食卓を囲んだ家。
親が大切に暮らしてきた家。
でも、年月が流れ、いつしか誰も住まなくなった。
畳は古くなり、壁紙は剥がれ、庭には草が生える。
そして、ふと我に返る。
「この家、売れるの?」
結論から言います。
売れる可能性は、十分にあります。
ただし。
「不動産会社にお願いして、あとは待っていればいい」
というほど、簡単な話ではありません。
特に長野市の郊外にある古い家や、築50年以上の住宅では、最初の動き方を間違えると、長期間売れない状態になってしまうことがあります。
私はこれまで、一般的な不動産会社なら扱いにくいと思われるような空き家も含め、さまざまな物件を流通させてきました。
その経験から、古い家を売るときに考えてほしいことがあります。
古い家だから売れない…本当にそうでしょうか?

まず、一番最初に捨ててほしい考え方があります。
「古いから売れない」
これは、必ずしも正しくありません。
もちろん、新築住宅と比べれば不利な部分はあります。
築50年。築60年。場合によっては、それ以上。
建物そのものに大きな価値を付けることが難しいケースもあります。
しかし、不動産の価値は建物だけではありません。
- 土地があります
- 場所があります
- 道路があります
- 周辺環境があります
そして、その土地を「欲しい」と思う人がいるかもしれません。
例えば、
- 古い家を壊して新築住宅を建てたい人
- 古い家を自分でリフォームして住みたい人
- 田舎暮らしをしたい人
- 仕事場や倉庫として使いたい人
- 家庭菜園をしたい人
- 広い土地を探している人
一般的な住宅購入者とは、少し違った視点で物件を探している人もいます。
つまり「古い家を売る」のではなく、「その物件を必要としている人に届ける」という発想が重要なのです。
街中の家と郊外の家では、戦い方が違う

長野市の中心部や市街地に近い場所なら、話は比較的シンプルです。
土地の需要があります。
住宅用地として探している人もいます。
建物が古くても、「土地」として評価してもらえます。
ところが、郊外に行くと状況は一変。
- 駅から遠い
- 車が必要
- 土地が広い
- 建物が古い
- 庭が荒れている
- 残置物が大量にある
- 場合によっては農地や山林が絡んでくる
「誰が買うんだろう?」
と思ってしまうような物件もあります。
ここで重要になるのが「誰に売るのか?」という視点です。
ただ「中古住宅」として市場に出して終わりではありません。
「この家なら、こういう使い方ができます」というところまで考えてあげる。
これが、郊外の古い家を売るときには非常に大切です。
「高く売りたい」が、売れ残りの原因になる

ここは、少し厳しい話をします。
売主さんにとって、一番大切なのは当然「少しでも高く売ること」です。
それは私も理解しています。
何十年も住んできた家です。思い出もあります。
親が残してくれた家なら、なおさらです。
「せっかくの財産なんだから、できるだけ高く売りたい」
そう思うのは当然でしょう。
しかし、不動産市場は思い出では動きません。
買う人は「この価格なら買いたい」と考えます。
特に古い家の場合、
購入価格+リフォーム費用+解体費用+残置物処分費用+その他の諸費用
というように、買主側にはさまざまな負担が発生します。
そこで売主さんが「土地も広いし、昔はもっと高かったから、このくらいで売れるでしょう」と価格を設定してしまう。
ところが買主から見ると「この金額を払って、さらに何百万円もかけて直すの?」となる。
こうなると、なかなか話が進みません。
そして半年。一年。二年…。
時間だけが過ぎていきます。
最初は「売れるまで待ちます」と言っていた所有者さんも、やがて「まだ売れないんですか?」となるのを何度か見てきました。
ここが怖いところです。
最初の価格設定を間違えると、物件そのものが悪いのではなく、「売れ残っている物件」という印象がついてしまうことがあります。
古い家は「見せ方」で印象が変わる

では、どうすればいいのか。
私が古い家を扱うときに意識するのが
「この物件の欠点を隠す」のではなく「価値の見せ方を変える」ということです。
例えば「築50年以上の古家」とだけ書かれていたら、どうでしょう?
多くの人は「古そうだな」で終わってしまいます。
しかし、
- 「広い庭のある古民家風住宅」
- 「自分で好きなようにリフォームできる家」
- 「家庭菜園を楽しめる広い敷地」
- 「静かな環境で暮らしたい人向けの住宅」
と見せ方を変えたらどうでしょう。
同じ家でも、受け取る印象は変わります。
もちろん、嘘を書いてはいけません。
- 雨漏りがあるなら、その事実は伝える
- 建物が傷んでいるなら、それも伝える
- 再建築の可否など、重要な事項も確認する
そのうえで「この物件には何ができるのか?」を考える。
発信の仕方をちょっと変える。
これが大切なのです。
「家を買う人」ではなく「土地を使う人」を探す

古い家を売るとき、私は視野を少し広げます。
「中古住宅を買いたい人」だけを探してはいけません。
「この土地を使いたい人はいないか?」と考えます。
例えば、
- 建物を直して住む人
- 建物を壊して新築する人
- DIYが好きな人
- 家庭菜園をしたい人
- ペットと暮らしたい人
- 倉庫や作業場が欲しい人
- 地方で新しいことを始めたい人
- 都会から移住してきたい人
世の中には、普通の住宅情報だけでは拾いきれない需要があります。
だからこそ、古い家ほど「誰に向けて売るか」が重要になります。
私が空き家を見るとき、最初に注目するもの

空き家を見に行くとき、私は建物だけを見ているわけではありません。
むしろ、建物以外を見ることも多いです。
- 道路はどうなっているのか
- 駐車スペースはあるのか
- 隣の家との距離はどうか
- 日当たりはどうか
- 庭はどうか
- 周辺にも空き家はないか
- 境界標はあるか
- 買った人が、どんな生活を送れそうなのか
古い家を見るとき「ボロボロだからダメだ」と思ってしまうのは簡単です。
でも、不動産屋の仕事は欠点を数えることだけではありません。
その物件の中から、
- 「まだ使えるもの」
- 「活かせるもの」
- 「欲しいと思ってくれる人がいる部分」
を探すことも仕事だと思っています。
それでも売れない家はあります

ここまで読んで「じゃあ、どんな古い家でも売れるんですね」と思われた方。
そこは違います。
残念ながら、すべての物件が簡単に売れるわけではありません。
- 立地
- 接道
- 土地の形
- 法令上の制限
- 建物の状態
- 周辺環境
- 価格
さまざまな条件が絡み合います。
場合によっては、売却よりも賃貸や土地活用、あるいは解体など、別の方法を考えた方がいいこともあります。
だからこそ「とりあえず売りに出してみよう」ではなく、売りに出す前に、その物件の出口を考えること。
これが重要なのです。
そして、もう一つ大切なのが「初動」です

古い家を売るとき、私は初動をかなり重要視します。
- 価格をどうするのか
- どんな見せ方をするのか
- 写真・動画どう撮るのか
- どんな説明文を書くのか
- どんな人に見てもらうのか
- リフォームするのか、しないのか
- 残置物をどうするのか
- 空き家バンクを利用するのか
- 一般的な中古住宅として売るのか
- 土地として考えるのか
こうしたことを最初に整理します。
ここを曖昧にしたまま「とりあえず広告に載せておきましょう」…
では、郊外の古い家は苦戦することがあります。
一度「ずっと売れない家」になってしまうと、売主さんの精神的な負担も大きくなります。
家はそこに建っているだけなのに「いつ売れるんだろう」という不安がずっと続く。
- 固定資産税もかかる
- 草も伸びる
- 雪も積もる
- 管理もしなければならない
空き家は、時間が経つほど所有者さんの負担が増えていくことがあります。
だからこそ、最初が大切なのです。
「売れない家」ではなく「まだ売り方が決まっていない家」かもしれない

私は、これまでいろいろな空き家を見てきました。
一見すると「これは大変そうだな」と思う家もあります。
でも、少し視点を変える。
- この家を欲しいと思う人は誰なのか
- 何に魅力を感じてもらえるのか
- どこまで手を入れるべきなのか
- 価格はいくらなら現実的なのか
- どういう写真なら、この家の雰囲気が伝わるのか
そうやって一つずつ考えていくと、「売れない家」が、「売り方を考える必要がある家」に変わっていきます。
これは大きな違いです。
古い家を手放したいあなたへ

もし今、長野市に古い実家を持っているなら…
- 築50年を超えている
- 誰も住んでいない
- 家具も残っている
- 庭も荒れている
- 建物も傷んでいる
そんな状態でも「もう無理だろう」と決めつけるのは、まだ早いかもしれません。
もしかしたら、その家を必要としている人がいるかもしれません。
もしかしたら、その土地を探している人がいるかもしれません。
もしかしたら、少し見せ方を変えるだけで、問い合わせにつながるかもしれません。
繰り返しになりますが、「古いから売れない」のではなく「古い家だからこそ、売り方を工夫する必要がある」のだと思います。
私は、空き家をただ「古い建物」として見るのではなく、その先にある人の暮らしまで想像するようにしています。
誰かが手放そうとしている家。
誰かが「こんな家を探していた」と思う家。
その二つをつなぐ。
それが、この仕事の面白さだと思っています。
最後に――「この家、売れるの?」と聞かれたら
もし私が「この家、売れるでしょうか?」と聞かれたら。
現地も見ずに「はい、売れます」とは言いません。
逆に「こんな古い家、無理ですよ」とも言いません。
その家を見ます。
土地を見ます。
周辺を見ます。
道路を見ます。
そして「この家なら、どうすれば次の人につなげられるだろう?」と考えます。
長野市には、まだまだたくさんの古い家があります。
その中には、誰にも使われず、静かに時間だけが過ぎている家もあります。
でも、その家にも、かつては家族の笑い声がありました。
朝、玄関を開ける人がいて。
学校へ向かう子どもがいて。
仕事から帰ってくる人がいて。
夕食の匂いがしていた。
そんな家が、ただ「古い」という理由だけで、その役目を終えてしまうのは少し寂しい気がします。
だから私は、古い家を見るとき「もうダメだ」
ではなく「この家、次は誰のところへ行けるだろう?」と考えます。
もし今、「この家、売れるの?」と悩んでいるなら。
その答えは、家そのものだけでは決まりません。
価格。見せ方。売り方。そして、その家を必要としている人をどう探すか。
そこまで考えて、初めて「売れる家」に近づいていくのです。
私はこれまで、さまざまな空き家を見て、考えて、動かしてきました。
だからこそ言えます。
古いから、売れない。
そんな簡単な話ではありません。
家には、まだ次の人生が残っているかもしれません。









