「人は家を選ぶ。だが、ときに空き家が人を選ぶ」
……はい、名言を発しました(笑)
でも今回、私は本当に、この家に選ばれてしまったのかもしれません。
新しい「空き家レスキュー」が始まります。
今回の舞台は、長野市大岡甲。
山あいの道を進み、さらに細い道を入っていく。
その先に、ひっそりと一軒の家があります。
「隠れ家」のような空き家です。
そして、この物語。
ちょっと変わった始まり方をしました。
この家、実は一度「売れかけた」のです。
ところが――。
契約直前で、キャンセルになりました。
「なかなか売るのは難しいんですね…」

この家は、長野市の空き家バンクに登録され、売りに出されていました。
土地は約750㎡。
建物は木造平屋の5DK。
1979年築で、1997年には増築と一部リフォームもされています。
販売開始から、1年と数カ月…。
その間、価格も何度か見直しました。
問い合わせは10件ほど。
その中には、県外から「田舎暮らしをしたい」という方もいました。
そして、ついに申込みが入った。
「やっと決まって良かった…」
オーナーさんも、そう思われたことでしょう。
ところが、契約直前になって買主さんからキャンセルの連絡。
熟慮された結果、やはり田舎暮らしに対して、一抹の不安を感じられたようです。
都会から知らない土地へ移り住む。
まして、山あいの家です。
買ってしまえば、簡単には戻れません。
その気持ちは、私にもよく分かります。
オーナーさんは、ぽつりとおっしゃいました。
「なかなか売るのは難しいんですね……」
販売する側にも、少しずつ手詰まり感が出ていました。
実は私の会社でも、この家を買い取れないかと一度議題に上がりました。
しかし、会社としては買取りNG。
事業として考えれば、当然の判断だったと思います。
ところが――。
その後もオーナーさんと話をしていくうちに、私はこの家のことが頭から離れなくなっていきました。
私は、この家の「可能性」を買うことにした

私は、この家のポテンシャルを高く評価していました。
確かに、いくつか問題はあります。
でも、それ以上に面白い。
オーナーさんの希望は
「この家を上手く活用してくれる人に譲りたい」
ということでした。
その言葉を聞いて、私は考えました。
「だったら……私がやってみようかな?」
そして今回、個人でこの家を買うことになりました。
必殺!ダイレクトレスキューです(笑)
このまま同じように販売を再開しても、いつ売れるかはわからない。
ならば、私が物件を引き取らせてもらい、自由にカスタマイズしてみたいと思いました。
不動産って、ときどきこういうことがあります。
まずは、私自身が「遊んでみる」

まずは補修が必要なところを直します。
そして、しばらくは私自身が使ってみようと思っています。
別荘にしてみる。
キャンプをしてみる。
日曜大工してみる。
自然を観察してみる。
ギターを弾いてみる。
山に向かって叫んでみる(笑)
とにかく、この家で遊んでみる。
実際に自分が使ってみれば、
「ここは良い」
「ここは不便」
「これは直したほうがいい」
「こんな使い方もできるんじゃないか?」
ということが、きっと見えてきます。
そして十分にこの家の魅力と課題を体感したうえで、将来的には賃貸住宅として活用するつもりです。
「大岡には貸家がない」

今回、この家を購入する決め手の一つになったのが、地元の方々から聞いていた言葉でした。
「大岡には、売っている空き家はあるけど、貸家がないんだよ」
何人もの方から、そんな話を聞いていました。
確かにそうです。
「田舎暮らしをしてみたい」
そう思っても、いきなり家を買うのは勇気がいります。
知らない土地。
冬の寒さ。
雪。
車が必要な生活。
近所付き合い。
買ってから「やっぱり無理でした」では、簡単には戻れません。
でも、まずは賃貸で暮らしてみる。
半年でも一年でも暮らしてみて、
「ここなら住める」
「大岡が好きになった」
そう思ってから家を買う。
そんな「お試し移住」の選択肢があってもいいと思うのです。
だったら――。
私が先陣を切って、道を作ってみよう。
そんな気持ちも、今回のレスキューにはあります。
さて、この家。どんな家なのか?

ここからは、この「大岡甲の家」の特徴を少しご紹介します。
① とにかく「隠れ家」です
家は、道路からさらに進入路を入った一番奥。
南隣にも家がありますが、こちらも現在は空き家です。
つまり……
周囲からの視線が、ほぼありません。
言い方を変えれば、いい感じで孤立しています(笑)
静かに暮らしたい人には、かなり魅力的です。
ただし、その代わりに進入路が狭い。
幅はおよそ2mほど。
車で入るなら、軽自動車をおすすめしたいところです。
この「便利ではないけれど、だからこそ隠れ家」という感じ。
私は、結構好きです。
② 約470坪の原野が付いてくる
そして、この家にはもう一つ面白いものがあります。
隣接する原野です。
面積は約1,560㎡。
約470坪あります。
傾斜地ではありますが、以前のオーナーさんは、ここで畑をしていたそうです。
そして、この傾斜のおかげで――
眺望がいい!
北アルプスとは反対方向ですが、視界が開けています。
現地で見ていると、だんだん妄想が膨らんできます。
「ジップスライダー造れないかな?」
「ヤギ、飼えるんじゃない?」
なんて話にもなりました(笑)
ほかにも、何か面白いアクティビティができるかもしれません。
まだ何も決まっていません。
でも「何ができるんだろう?」と考えられる余白がある。
私は、こういう空き家が好きなのです。
③ ガレージ、浄化槽、そして「残置物なし」
ほかにもメリットとして、
- ガレージあり
- 合併浄化槽あり
- ユニットバス
- 風通しが良い
- 農機具などが少し残っている
など、田舎暮らしを考えると面白い材料が揃っています。
そして、空き家を再生するうえでありがたいのが、室内の残置物がないこと。
オーナーさんが、あらかじめ片づけてくださっていました。
空き家を購入するとき、意外と大きな負担になるのが、家具や家電、生活用品などの残置物です。
処分するにも費用がかかりますし、何より時間と労力がかかります。
今回は、その部分をオーナーさんがきれいに整理してくださっていた。
これは本当に助かります。
……とはいえ。
問題がないわけではありません。
むしろ、ここからが本番です。
最大の問題は「水」でした

実は、この家。
空き家歴、約10年です。
長い。
かなり長い。
ほぼ放置されていた時期もあります。
そのため、今回私が購入する前から、水回りには大きな課題があることは分かっていました。
実際に通水してみると――。
浴槽のあたりから、
「シャー……」
壁の中から、
「シャー……」
嫌な音が聞こえてきます。
冬季の凍結によって、給湯ボイラーや給水管が破損しているようです。
キッチンから水を出してみても、
「……ちょろちょろ」
サビなどが詰まっているのか、水の出も細い。
浄化槽も含めて、全体的な点検が必要です。
さて。
いったい、いくらかかるのでしょうか。
考えたくありません(笑)
でもトライしたい

これから、補修をして。
水道を直して。
浄化槽を確認して。
庭を整えて。
実際に自分で使ってみて。
そして、いつか誰かに貸す。
その過程で、きっと新しい問題も出てくるでしょう。
「こんなところが壊れていたのか!」
「こんなにお金がかかるのか!」
「やっぱり田舎暮らしは大変だ!」
そんなことも、あると思います。
でも、それも含めて記録していこうと思います。
売れなかった空き家が、誰かが暮らせる家になるまで。
そして、その先にどんな物語が待っているのか。
世のため。
人のため。
空き家のため。
そして――
自分のため。
ちょっと不安ですが、トライしたい。
長野市大岡甲のこの家に、もう一度、息を吹き込んでいきます。
次回は、お手入れスタート。
10年間眠っていた家で、最初に私を待っていたものとは――。
「空き家レスキュー・大岡甲編②」へ続きます。
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