相続空き家の相談を受けていると「土地は登記されているのに建物の登記がない」というケースがよくあります。
土地はちゃんとある、固定資産税も払っている、何十年も前から家も建っている。
なのに法務局で調べると…
「あれ?建物が存在しないことになってるぞ?」
まるで学校のクラス写真にちゃんと写っているのに、卒業アルバムの名簿に自分の名前だけ載ってないような状態。
実はこうした「未登記家屋」は、昔からある家では珍しくありません。
ただし、問題はここから。
未登記のままでも普通に暮らせてしまうため、「今まで問題なかったから大丈夫」と思われがちですが、いざ空き家を売ろうとすると急に話がややこしくなることがあるんです。
今回は「未登記家屋とは何なのか?」「なぜ起こるのか?」、そして売却前に知っておきたいポイントをお伝えします。
未登記家屋って何?

簡単に言うと「家は存在しているけど、法務局に建物として登録されていない状態」のことです。
土地には地番というものがあります。
そして建物にも、本来は「ここにこういう建物がありますよ」という登録情報(家屋番号)があります。
ところが未登記家屋は、その登録がされていません。
イメージすると、学校に転校して教室には座っているのに、出席簿に名前がない状態です。
先生が点呼します。
「田中くん!」
「はい!」
「佐藤さん!」
「はい!」
「……あれ?君は誰?」
「毎日来てますけど」
みたいな状態です。
家も同じです。
現実には存在していても、登記上は存在していないことになります。
なぜ未登記家屋になるの?

「そんな大事なこと、どうして放置されるの?」と思いますよね。
実は昔は、今ほど登記への意識が高くありませんでした。
例えば昔、自宅を建てる時。
今のように住宅ローンを使わず、親戚の大工さんに頼んで現金払いで建てたケースもたくさんありました。
当時の会話を想像すると…
大工さん「家できたよ」
家主さん「ありがとう!」
大工さん「登記は?」
家主さん「ん?何それ?」
という感じだったかもしれません。
もちろん極端な例ですが、昔は今ほど登記が当たり前ではありませんでした。
さらに建物登記には費用もかかります。
専門家に依頼すると数万円から十数万円程度かかることもあります。
そのため「住めるならいいか」と、そのままになったケースもあります。
固定資産税を払っていても未登記なことがあります

ここが少しややこしいポイントです。
「固定資産税を払ってるなら登記されてるんじゃないの?」と思う方が多いです。
実はそうとも限りません。
市町村の固定資産税の台帳と、法務局の登記は別物だからです。
そのため「未登記なのに(行政が把握している)固定資産税は課税されている」というケースがあります。
逆に「未登記で、しかも課税されていない」というケースもあります。
後者は注意が必要です。
なぜなら、この“課税漏れ”が見つかった場合、過去にさかのぼって請求される可能性があるからです。
忘れていた宿題を先生に見つかって「そういえば君、3年前のプリント出してないよね。その分を追加ね」と言われる感じです。
しかも笑ってごまかせません。
税金ですから…
未登記のまま売ることはできるけど…

実は未登記家屋でも売却自体はできます。
ここで「じゃあそのままでいいじゃん」と思う方もいます。
しかし問題は買う側です。
買主からすると「なんで建物の情報がないの?」となります。
そして場合によっては、購入後に買主側が登記の手続きをしなければならないことがあります。
さらに課税漏れなどの問題が見つかれば、思わぬ話が出てくることもあります。
そうすると買主の頭の中では「なんか面倒そうな物件だな…」という赤ランプが点灯します。
人間は基本的に面倒が嫌いです。
夏休み最終日の宿題くらい嫌いです。
住宅ローンや火災保険にも影響することも

これが売却で一番大きい問題かもしれません。
買主が住宅ローンを使いたい場合、未登記家屋が障害になることがあります。
銀行としては「建物の情報がよく分からない」状態ではお金を貸しにくいからです。
さらには火災保険に影響するケースも。
家の情報が曖昧だと、加入手続きが通常より複雑になることもあります。
結果として「この家やめておこうかな」となってしまうことがあります。
物件そのものが悪いわけではないのに、手続き上の問題で敬遠されてしまうのです。
これはかなりもったいない話ですね。
まとめ
未登記家屋は、普段生活しているとあまり困らないことがあります。
だからこそ長年そのままになりやすいのです。
しかし空き家の売却になると、
- 買主の負担が増える
- 課税の問題が出る可能性がある
- 住宅ローンに影響することがある
- 火災保険に影響することがある
- 結果的に買い手が減る
という問題につながるかもしれません。
空き家を売ろうと思った時に、初めて気づくケースも少なくないのです。
もし「うちも古い家だから怪しいかも…」と思ったら、一度確認してみるのがお勧めです。
存在しているのに、書類上は存在していない。
人間ならちょっとホラーですが、家では意外と起きています。









