なぜ今、相続登記が必要なのか?山火事の復旧を止める「名義の空白」

不動産の実務に関わる中で、日々感じるのは「相続登記って、本当に後回しにされやすいな〜」という現実です。

でも、その「ちょっと面倒だから」という先送りが、想像以上に大きな問題に発展することがあります。

まさに今、長野県上田市で起きていることもその一例です。

山火事から3カ月…復旧の足かせは「名義不明」

2025年2月、上田市武石で起きた大規模な山林火災。

60ヘクタールもの私有林が燃え、被害は甚大でした。

今後、土砂流出などのリスクがある状態。一刻も早い復旧が求められ、国の補助金を活用した山林整備を進めたいところ。

ところが、作業が全く進んでいない。

その理由は「土地の持ち主がわからない」から。

実は、このエリアの山林の多くが、今だに故人名義のまま登記がされていない状態でした。

相続登記がされず長年放置された土地が多く、所有者をたどると、一筆の土地に5人〜20人もの相続人がいたりして、大正時代から登記が動いていないケースも…!

上田市の担当者も「所有者特定は途方もない作業」と頭を抱えているとのことなんです。

「うちは山なんてないから大丈夫」…本当に?

「山林の話でしょ?うちは関係ないよ」と思われた方、それは少し危険です。

相続登記の未了は、都市部でも田舎でも、山でも畑でも、どこにでも起きている問題です。

地方に住む親が亡くなったあと「残された財産も少ないし、家族で揉めないだろうから」と、不動産の名義変更を変えずにいるパターン。

この「とりあえず放置」が、代を重ねるごとに相続人がねずみ算式に増えていき、いざ何かしようと思ったときに…

「誰の承諾が必要なのか分からない」

「見知らぬ親戚にまで連絡しないといけない」

…といった事態になってしまうのです。

2024年から相続登記は義務化されました。

3年以内に登記をしないと10万円以下の過料が科される可能性もあることは、もうご存知ですよね?

相続登記は、未来へのバトン

山火事という非常時に「所有者不明」という壁が立ちはだかった上田市武石の出来事は、他人事ではありません。

土地を守るのは、所有者としての責任。

それを明確にするのが登記であり、未来に土地を引き継ぐためのバトンです。

「うちはそんな大した土地じゃないし…」

ではなく、

「今のうちにきちんと整えておこう」

と考えることが、地域の安心と家族の負担軽減につながります。

もし、登記をどう進めたらいいか迷われている方がいれば、専門家への相談から始めてみてはいかがでしょう。

私もサポートしますよ。

いつかの「面倒」が、未来の「取り返しのつかない問題」にならないように―。